小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2008年11月1日(土)
第1話: いざ新天地へ!

 3日前、渋谷区のアパレルメーカーK社に入社した沖田裕貴は、今まで居た会社の百貨店への営業と全く違う営業スタイルに戸惑いを感じながらも、新ブランド構築という業務に関わっていることに、新たなやりがいを感じながら、日々仕事に励んでいた…。
 沖田は都内の大学を卒業後、大手アパレルメーカーに就職し、都内百貨店を10年間担当していた。しかし、順風満帆に見えたその会社もここ最近の店頭消化の悪化から陰りが見え始め、組織の再編成や異動が恒常化し、沖田自身も会社のやり方に疑問を感じていた。
 今の年齢ならまだ自分の力を試せると思いこの秋に行われた希望退職に手を挙げ、改めてアパレル営業マンとして他社でチャレンジすることを決意した。
 当時同じ百貨店に出入りしていたK社の営業部長に「新ブランドを立ち上げるのでうちに来ないか!」と誘われていたのも転職を決意した理由の一つだ。沖田は、業界の就職難の現況も知らず好条件で再就職が出来た。先月生まれたばかりの子供を抱えた妻を不安にさせる事もなく、新天地に夢胸膨らませていた。
 社長面談の時、「うちは元々60代ミセスをターゲットとした専門店卸のメーカーだが、この新ブランドは40代の活動的でファッションに興味のある女性を意識したブランドとして社運をかけて立ち上げた。だから新しい考え方の営業マンが必要だったのだ。ただ焦ることはない。3年ぐらいでじっくり育て上げてくれればいい。その間は本体ブランドがカバーする」と言われ、その余裕の言葉に安堵した。
 ところが、営業部長の沢田から「社長の言葉を真に受けるなよ。社長が3年と言ったら1年半で答えを出さないとだめなんだ。」 「どうしてですか?社長は3年でじっくりやっていいと言いましたよ」と 沖田。「今の時代に経営者が3年も待てると思うか?これからも肝に銘じておけよ、経営者が言う期限は半分で、かける経費も半分しかないということを」と沢田。
 のんびり屋の沖田はその場で絶句した。

■絶句した沖田が次に取った行動は…。