■前回のあらすじ…自分の営業スタイルを変えようと動き出した沖田は、刺激的なオーナーと会うことになった
アポの時間5分前に到着した沖田は、取り敢えず名刺と手帳だけ持って3階の本部に上がった。
ドアを開けて「おはようございま〜す。」と、新入社員のような大きな声でまずは自己紹介。本部の女性達が「おはようございます。お待ちしていました。」と笑顔で出迎えてくれたことに逆に驚いた。
昨夜のアポ取りなのに社長から聞いていたのか、快く応接室に通された。
そして10時ちょうどに社長が現れた。
「おはようございます。赤木と言います。」50代前半の社長の顔色は良く、やはり笑顔で迎えてくれた。沖田は昨夜の電話を深く詫び、早速に会ってくれたことへの感謝を伝えると、すぐに社長の話しが始まった。
『さて、昨日の中島君の話しだと専門店の現状が知りたいとか…』
「そうなんです。私は以前百貨店担当だったのですが、今の会社で専門店担当となり、何も知らないで営業するのもどうかと思い相談したんです。すると赤木社長に聞くのが一番だと彼が言うので無理やりその場で頼んだのです。善は急げと言いますし…」
『善かどうかは別としても光栄なことです。私の店の事で良ければお話ししますよ。取引もない初対面の貴方だが、うちのスタッフが皆OKを出していましたから。』
「はっ?スタッフの方がOK…ですか?」
『そうですよ。彼から聞いていませんか?うちに初めて来られた営業マンには、スタッフの秘かな1次審査があることを。うちの女性3人とも元販売員ですから、瞬間的に営業マンの資質を見抜きます。一瞬で判るそうです。 何せ自分達が関わる相手ですからね。現場が判断し、その情報を聞いた上で私が会います。ただこのことを教えたのは中島君だけです。あつ、そうか彼は何も言わなかったのか…流石だなあ。新規の営業の方で、どうして断られたのか判っていない人もいるはずです。』
「う〜ん。接客業は奥が深いですね。」
『接客業という考えではだめです。うちは一小売り屋ですが、全員サービス業を目指しています。』
「例えばリッツカールトンホテルのような?」(昨夜中島が貸してくれた本が、まさにその内容だったのだ。)
『よくご存じですね。あの本を読まれましたか。あの域までは行けませんが、ヒントはたくさんありますね。』(そうか、中島も赤木社長の影響か…)
『私の仕事は船の舵取りです。だからその方向を決めるための情報収集には貪欲です。もちろん彼女たちの小さな情報もその一つです。そのために、たくさんの人と会い、できるだけ多くの本を読むようにしています。つまり情報の仕入れ…ですかね。』
■赤木社長が目指すブティックのサービスとは一体どんなものなのか、さらに話しは続く…
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