小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2009年2月8日(日)
第8話:角度を変えて見る!

■前回までのあらすじ…沢田部長から関西で当社に出店要請があることを聞き、その話しを聞いて来るように言われた沖田は、運命の大阪に入った。

 朝一番で大阪入りした沖田は、前職の仕事で来て以来7年ぶりだったので、通勤の流れに乗って駅周辺を少し歩いてみた。JR大阪駅や地元百貨店の改築工事はあるものの、基本的に街並みも人の流れも、空気さえも7年前と変わっていないことに驚いた。
 東京では、気が付くと駅ビルやファッションビル、地下街や新しいビルが出来て、街も人の流れも変わってしまうほど目まぐるしい。だからここ大阪も多分そうだろうと言う期待を少し裏切られたような気がした。
 リーシング会社の部長と会うのは明日の朝なので、その前に市場リサーチと、地元企業との情報交換をしておこうと昨日アポを取っていた。
 最初に向かったのは、繊維の街大阪のシンボルである船場センターだった。そこに取引先で問屋の(有)グランドの西川社長を訪ねた。
 この会社は出来て9年足らずの後発だが、西川社長もかなりの情報通で、新しいことにも敏感だ。いま東京メーカーを中心に仕入れをしており、卸し先の専門店からも重宝がられ、着実に数字を伸ばしていた。
 「こんにちは。先日は展示会で有難うございました。沢田部長も宜しくとのことです。」
 『おお、まいどっ。7年ぶりの大阪はどや、変わったか?えっ?変わってへんてか。せやろなあ。変わるのが怖い大阪人やから発展せえへんねん。過去の栄光や慣習にしがみついているから新しい人やコトが伸びひんねん。』
 「そうなんですか?」
 『せや。組合も団体もあるけど大きすぎて機能してへん。総論賛成各論反対やから、具体性が無いねん。』
 「関西の市場は厳しいと聞きますが、本当ですか?」
 『厳しいねえ。さっきも言うたけど、変えようとしない人が多いから、新しいことにチャレンジせえへんねん。そのくせ文句は多い。だから、チャレンジするオーナーと出会った時は最高の取引ができるんやけどね。』
 「いますか?そんなオーナーが。」
 『居るよ。でもみんな気がついてへん。おんなじ人物と付き合ってんのにやで。片方には売れまへんなあ言うてて、こっちにはどんどん新しい事始めようて言うてくれる。結局人と人との関わり方やな。【この人はうちにとって何か変革をもたらしてくれそうだ】と感じたら向こうから声掛けてくれるわ。その為の努力を営業マンが怠ってるだけや。まあ、色んな人と会って見なはれ。関西の懐は深いよって、おもろい奴もぎょうさんおるで。頑張りや!』


■西川社長に背中を叩かれ、勇気づけられた沖田は次の訪問先に向かった。運命の出会いはすぐそこに…。