小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2009年 5月 17日(日)
第15話: 「近づいたもの、離れたもの…」
■前回のあらすじ…企画と営業のブランドに対するコンセンサスを取るために、関係者8人が自由が丘と銀座でマーケットリサーチを行うことになり、その結果報告会が行われた。


「いっせーのーで」と言う声に、社長室に集まった8人が同時に、持参した新ブランドに合うと思われる店の写真を机の上に出し合った。
 『おお〜!』と言うどよめきと共に、『ええっ!』と言う感嘆符も上がった。
 8人が自由が丘に入った日時は別々で、互いに相談もしないルールだったので、まさに机の上に出た店の写真は、本人以外は今初めて見るものばかりであった。
参加者8人の内訳はこうだ。
河本社長・営業部長の沢田・本体ブランドも営業している中堅の金本・若手の藤原と、このブランド専属の沖田。さらに企画部長兼新ブランドチーフデザイナーの大西女史・パタンナーの大垣、そして生産の村上の合計8人である。
 出された写真の角度や大きさは違うが、企画側の3人が撮ってきた店はすべて同じで、マリクレール通りにあるM店だった。
それに比べ、営業側4人の写真は全く違い、企画側のM店とも重なっていなかった。
 そして河本社長の撮ってきた写真はと言うと、携帯写メを経理に頼んでプリントアウトしてもらい、ブレてはいるが明らかに沖田が撮ってきた商店街路面のG店であった。
 つまり、企画3人が同じM店。河本社長と沖田が同じG店。沢田部長・金本・藤原は別々の店という結果になったのだ。
 「明らかに企画と営業部の視点が違っていることは明らかになったが、銀座の店のリサーチの結果もまだだから、なんとも言えない。しかし、これで営業・企画の視点が違えば根本的にやり直さなくてはならないと言うことだ。つまり、結果がどうと言うより、納得して事に当たらなければ成功はないと言う事実が待っているわけだ。」
 河本社長の話しに皆うなずく。
「自由が丘だけでも、婦人服の店は100軒以上あるだろう。銀座地区ともなればなおさらだ。ただ百貨店インショップは除くファッションビル内限定としたから、多分同じ店も出てくると思う。いよいよ結果が判るんだな。さてじゃあ次を出すか」と催促もあり、沢田部長が言葉を引き継いで掛け声をかけた。
「では、銀座地区の店を、せーので出し合いましょうか。」
 『ちょっと待って下さい。』と大西女史。
 『これで万一自由が丘と同じような結果となった場合、果たしてどちらが正解なのでしょう?と言うか、どちらへ進むべきなのでしょうか。例えばこのブランドのイメージが営業の方々にうまく伝わってないのなら、企画主導で理解してもらうべきなのか、コンセプトから来る営業の販売先に合わせて、企画するべきなのでしょうか…』
 「このブランドに関しては、企画主導で進めて下さい。」と河本社長の一言に、生唾を飲み込んだ営業の面々であった。
 「では改めて、いっせーのーで」と沢田部長の声に全員が並べた写真は、意外にも…

 ■次回、新ブランドの進むべき道がはっきりした。その内容と具体的な進め方とは…