小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

  ======================
主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
======================

2009年 11月 8日(日)
第28話: 2足のワラジは・・・
■前回のあらすじ…15周年記念でブランドのカタログ作成と共に、ホームページ(HP)もリニューアルすることに決定したのだが・・・

沢田部長と共に社長室に入った沖田に、河本社長からいきなり、
『愛?T?愛(aitai)はその後どうだ?』
「はい、新規活動している成果も徐々に表れてきています。ただ…」
『ただ、なんだ?』
「まだ、営業で従来の横並びの店にアプローチしている方もいて、その部分での理解度の差が出てきているような気がします。」
『理解度の差は店か?営業か?』
「どちらもです。まったく新たな発想で行かないと、本当にもったいないです。」
『だからHPも別にしてはどうかと言うんだな。』
「そうです。できればドメインから全く別にしたいです。逆に社長にお聞きしたかったのですが、社長は、どこに向けてのHPを作ろうとしたのでしょう?」
『どこと言うと?』
「バイヤー向けなのか?エンドユーザー、いわゆる生活者に向けてのものか?です。」
『両方には無理か?』
「無理だと思います。」
『なぜだ?』
「エンドユーザーが知りたいのは、展示会日程ではなく、販売店舗であり、商品の付加価値です。車のCMと同じで、自分が購入した車がCMで宣伝されていると、安心と納得と優越感を感じます。つまりユーザーは、商品を買った安心感によってリピーターになるんだと思います。それを身近なHPやブログで感じたいんです。」
『結局、沖田君はどちらに向けて作るのが良いと思うんだ?』
「それは会社が決めて下さい。私が言いたいのは、両方に向けて、さらにはリクルート活動も、お買い物かごも、ブログも、なんでもかんでも業者の言いなりに盛り込んで作らないでほしいと言うことです。結局、管理・運営するのは社員なんですから。」
『むむ・・・』
「沖田、言い過ぎだぞ」と沢田部長。
「言い過ぎでしたら申し訳ありません。ただ、新たなHPの管理・運営もまさか業者に任せようとしていたんではないですよね。専任はどの部署に?総務ですか?経理ですか?ひょっとして営業じゃないですよね。」
『そんなに難しいのか?』
「難しくないんです、楽しいんです。でも、片手間では出来ないです。もし兼務でするなら、本人も相当の覚悟がいるでしょうし、それをサポートしてくれる上司の理解もいるでしょう。」
『つまり、専任の担当者をつけろと言うことだな。』
「HPの方向性によると思います。バイヤー向けのイメージだけで、展示会の日程の予告やリクルート用の広告にするなら、シーズンごとの更新ですから業者に任せてもいいのでしょうが、ただ社内に責任者がいないので、たぶんなし崩しになって社員も見なくなりますよ。」
「沖田!」と沢田部長
『まあまあ』と河本社長
「エンドユーザーに向けてのもので、将来、商品をそこで販売につなげていくなら、必ず自社で更新ができる専任が必要となります。ただ固定費も時間もかかると思います。でも、愛?T?愛(aitai)は、できればそれで進めていきたいです。直営店のスタッフにそのための手当をつけても良いと勝手に思っていますけど。」
「おいおい」と沢田部長。
『判った、もう少し時間があるから、社内の各部署に聞いてみよう。有難う、結論はまた沢田部長に報告しよう。』
「有難うございました。」

■自分の気持ちを伝えた沖田が席に戻ると、噂していた直営店スタッフから「至急連絡乞う」との伝言メモが貼ってあった。