小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2010年 4月 28日(水)
第40話: 「チャンスはつかめ!」
■前回のあらすじ…退社する大垣サブチーフの紹介で、キャリアのあるデザイナーが居ることが判ったが、本人が受けてくれるかどうかは半々らしい。その彼女と意外な場面で…

大垣サブチーフから可能性のある話しを聞いた翌日、久しぶりの休日を子供たちと過ごしていた。そこに妻の宏美が
「もう何ゆっくり遊んでるの。遅れるわよ。」
「えっ、もうそんな時間か?」
「お母様からメールが来て、子供たちと買い物したいから少し早く来て欲しいって」
「また相変わらず自分勝手だなあ」と言いいながら、子供たちをせかして車に乗り込んだ。今日は子供たちを実家に預けて、宏美が結婚前にブランドショップの店長をしていた時の元上司と久しぶりに食事をすることになっていた。元上司の土井は、関東エリアのマネージャーで、実は沖田夫婦のキューピットでもあった。その土井が先月結婚しその新妻との食事会が実現したのだ。
 待ち合わせのホテルのレストランに到着して早々に、
「土井マネージャーお久しぶりです。」と沖田と宏美が笑顔で挨拶すると、
『よお、二人とも元気そうだね。』
「マネージャーも」と沖田。
『いやいやメタボになっちまったよ。あっ早速紹介します。えー、奥さんの陽子さん』
「マネージャー、紹介の仕方が変ですよ。」と宏美が茶化す。
運ばれてきた料理を食べながら
『改めると何だか照れるな。』
「初めまして。沖田と言います。」「妻の宏美です」
『初めまして、陽子です。どうそよろしくお願いします。』
『彼女は、元私の部下で、銀座店のやり手でうるさ型店長。そして彼は、うちの銀座店が入っていた百貨店の売上トップのON社の超イケメン営業。』
「うるさ型だけ余計です。」と宏美。
「超イケメンだけ余計です。」と沖田。
『あのON社の?』と陽子。
「ご存知ですか?」
『ご存知も何も、陽子はON社のライバルL社に居たんだ。』と土井。
「L社で何をされていたんですか?」と宏美。
『私はG−Oneの企画でした。でも土井さんとの結婚を機に、思い切って会社をやめちゃった。人生も環境も変えて一度自分を見つめ直そうかなって思って…』
「すごいなあ。私は子育てしたくて一時戦線離脱ですけど、もう少ししたら仕事探そうかと思ってるんです。でもマネージャーすごい人を手に入れたんですね。L社を敵に回しちゃったんじゃないんですか?大丈夫?」と意地悪そうな顔の宏美。
『おいおい、L社の社長も部長にもちゃんと挨拶して喜んでもらったんだよ。』と慌てる土井。
「あのう…」と真剣な顔の沖田が言葉をはさむ、
「陽子さんのお友達に大垣智子さんていう方いませんか?」
『えっ?いるけど、沖田さん知ってるの?』
「やっぱりだ!あの、その大垣さんの居る会社に今僕は居るんです。しかも新ブランド愛?T?愛の営業で、昨日も大垣さんと後任の企画をどうするか話していたんです。その時話しに出てきた人が…陽子さんのことだったんですね。驚いた!」一気に話す沖田。
『あれ?ON社じゃないんですか?』
「モトです元。去年春の希望退職組で、今は渋谷のK社です。」
『おいおい、すごい縁だなこれ。俺以上じゃないのこの出会いは?』の一言に、3人とも笑って雰囲気が一気に和み、食事が進んだ。

■千載一遇のチャンスと感じた沖田は、何とか好印象を維持させようと接しながら、会食を楽しんだ。翌週チーフとの面談に会社に現れた陽子は…