小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2010年 9月 4日(土)
第49話: 「ひらめきときらめき…」
■前回のあらすじ…事業部制およびブランド制のシフトに変わり、自分たち営業の効率をはかろうと新しいスタッフ採用の提案をした沖田だったが、社長から「今のメンバーでやること」と言われ、改めて結束を固めるべく集まった。

部署という程ではない4人のブランドは、リーダー沖田、営業藤原、企画アシスタントの中谷、そしてデザイナーの土井で構成している。もちろん上司は沢田部長であり、経理、総務など含めた間接部門は、本部経費とすることになっていた。
営業の藤原が口火をきった。「愛?T?愛(aitai)ブランドのキャラクターを作るなんてのはどうですか。折角ブランド名が可愛らしいと評判になってきたんですから、今のうちにキャラクターを作って商品と共に売り出しましょう。ホームページもブランド中心でもう一度作り直しませんか。」と、少しばかり学生のクラブ活動のノリのような雰囲気になってきた。
「でも、それって面白いかもしれないわ」と企画アシスタントの中谷さん。
「今までうちの会社は、百貨店のミセス売り場中心に展開してきたから、キャラクターのような存在にはまるで縁がなかったもの。せいぜい有名ブランドのぬいぐるみやノベルティーぐらいだもの。」
『でもそれを作ってブランドキャラとして販促にかけるとしても、どうも2番煎じっぽくないかなあ…』と弱腰の沖田。
『しかもそれを作るにはそれなりのデザインと販促計画が必要で、相応の費用もかかると思うけど…』
「そりゃ有名なデザイナーに頼めばかなりの企画料はいるし、商標もとらないといけないんでしょう。社内で誰か知りあいがいるんじゃないですかね、そう言う人」とトーンの落ちた藤原。
『それ以外に何か具体的に実行できることはないですか?』と話題を変える沖田。
「そう言えば、私の知り合いがメーカーに居た時、新ブランドのデビューを何かの合同展に出展したはずだったわ。」とデザイナーの土井女史。
『合同展ですか・・・それはどれぐらいの規模なんですかね?』と沖田。
「たしか福岡の個性派メーカーが中心となって東京でやったとかで、そこに東京メーカーが数社入った6・7社ぐらいって聞いたけど。聞いたその時はそれほど興味がなかったから深く聞かなかったの、ごめんなさい。」と恐縮する土井女史。
『あっ、いいんですよ。結構合同展って色々あるから。僕も興味があるんですが、誰がどこでやってやっているのか判らないので困っていたんです。』
「一度その人に聞いてみましょうか?」
『ぜひお願いします。』と沖田は何かひらめいた様子だった。
「合同展もいいですよね。僕らはなかなか新規が呼びきれないけど、そこに参加すれば新規もゲットできそうですもんね。」と意気上がる藤原。
『おいおい、まだ何も決まったわけじゃないよ。』とたしなめる沖田。
「いやそうですけど、何だか面白そうじゃないですか。うちで本体ブランドと一緒にやるより刺激になるし、いいんじゃないですか!」
『土井さんちょっと聞いてくれませんか?』
「わかりました。ちょっと電話してみます。」と言って、自分の席に行って携帯で話し始めた。

■何も決まっていないのに、何だか急に目の前が広がったような気がした3人だった。そこに戻ってきた土井女史の顔は…