小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2010年12月 12日(日)
第56話:「挑む!」
■前回のあらすじ…児島社長の会社から戻った沖田は、早速沢田部長の元に報告のために向かった。

『ただいまあ。あれ?部長は?』とアシスタントの中谷に尋ねると、
「お帰りなさい。部長は今社長室に居ますよ。沖田さんが戻ったら社長室に来るようにって言っていました。」と中谷。
『えっ?社長室に?』と驚く二人。
「ええ、部長もさっき社長に呼ばれて行ったんですが、沖田さん達が戻ったらいつでも内線してくれって言っていましたよ。」と中谷。
『わかった。』と言って早速社長室に内線すると、すぐに来るように言われた。
「何かあったんですかね?」と不安そうな藤原。
『わからない。でもそれほどのことなかったような気がするけど。とにかく行こう。』と沖田。
「えっ?僕もですか?」とたじろぐ藤原。
『当たり前だろ。それにさっき電車で話した内容をとにかくぶつけてみようよ。どっちみち今回の件は沢田部長が仕掛けたことなんだから、社長がいる方が話しが早いかもしれないし…』と沖田。
「苦手なんだよなあ、河本社長。」と藤原。
『どうして?我は強いけど、親分肌だと思うけどなあ…結構話しも聞いてくれるし』と沖田。
「そうなんすけど、突っ込みも鋭くて、ちゃんと自分の答えを持ってないと『出直せ!』って言われるんすよね。」と苦笑いの藤原に、苦笑する沖田。
そして社長室前に着いた二人。
『失礼します!沖田と、藤原です。』と言って部屋に入って行った。
「御苦労さん。こっちへ入ってくれ。」と社長が手招いた。
そこには部長の沢田、そして今回の編成で本体営業マネージャーになった金本がいた。
「どうだった?児島社長の話しは?」と早速に沢田部長が聞いてきた。
『はい、合同展には意欲的でした。でも、我々は沢田部長に言われて、合同展のノウハウを聞くために行ったのだと思ったら、児島社長が逆にこちらが主催して動くと聞いているからぜひ参加させてくれと言われ、慌てました。とっさに部長に仕掛けられたんだと思って、それなりの対応をしましたが…』と顔を見合す沖田と藤原。
「まあ、ある意味君たちに試練を与えたつもりなんだけどな。これは社長もご存じだ。」と沢田部長。
『一体どうすればいいんですか?我々にそんなノウハウもないし、まして他社を巻き込むなんて。自社だけでも大変なんですけど、いいんですか?こんな状態で廻りを巻き込んでも…』と腰が引ける沖田。そこに、
「沖田君、部長とも話したんだが、今回新たな販売方法としての合同展を勧めたのは実は私なんだよ。」と河本社長。
『えっ?そうなんですか。いったい…』と慌てる沖田。
「実は、本体ブランドも一緒に出そうかとも思っている。金本君も承知なんだが、本体の主力売り先である百貨店の売り上げが落ち込んでいるのは知っていると思うが、今のうちにブランドリニューアルと専門店・卸問屋・通販などの新たな開拓も手掛けようと思っている。そこで、機会を待ってていても仕方ないから、我々が出来ることから仕掛けようと言うことにしたのだ。ただ、本体ブランドはあまりにもブランドイメージが強いから、いきなり新たな新規開拓は難しい。そこで愛?T?愛(aitai)ブランドを前面に出して動こうと思ったわけだ。やってくれるか?」と河本社長。
『(沈黙の後)本体ブランドのための我々は捨石ですか?』と沖田。
「なに!?」と顔色の変った河本社長。
「おい!」と慌てる沢田部長。

■いきなりの闘志を前面に出した沖田に、血相が変わった面々。熱き戦いは続く…