小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2011年 3月13 日(日)
第62話:喜びと苦しみ、長いのはどっちだ!
■前回のあらすじ…沖田が調べた貸しホールは全て埋まっていた。あきらめかけていた沖田に受話器片手にOKサインを出す和田…

「…では、今日の夕方に伺いますので、よろしくお願いします。」と和田が受話器を置くと、
「沖田さん、ありましたよ会場が…しかも恵比寿のど真ん中で」と、興奮気味の和田。
『えっ?どこにそんなホールありましたっけ?』と沖田。
「うちの取引先です。その担当にどこか貸しホール知らないかって聞いたら、うちのショウルームはどうですかってなったんです。」と和田。
『アパレルですか?』と目を輝かす沖田。
「アイライン株式会社というヤングのOEMの会社で、かなり大きなショウルームですよ。6〜70坪ぐらいあるんじゃないかな。フローリングだし。」
『よく貸してくれましたね。』と沖田。
「実はその会社もOEMだけでなくて自社商品も作って卸しているらしくて、今回の合同展の話しをしたら、ぜひうちも参加させてくれとなったんです。でもまだ会場が決まってないんですと話したら、それならうちのショウルーム使いませんかってなったんです。」と一気にまくしたてる和田。
「で、今日の夕方ならショウルームは空っぽなので見れますよって言われたので、ぜひ沖田さんにも見てもらいたくて勝手に行く返事しましたが、ダメでしたか?」
『もちろんOKです。でも本当にいいんですかね?』とまだ不安そうな沖田。
「行ってから、いろいろ確認すればいいじゃないですか。初めてのことだし、何もかもすべて満足いくことはありませんよ。」と根っからポジティブな和田に、
『そうですよね。会場が見つかっただけでも良かったのに、新たなメンバーまで見つかったんだから、2重に喜ぶべきなんですよね。』とやっと笑顔になった沖田。
…そして、夕方。
「こんにちは、今日はすみません突然のお話しなのに…」とあいさつする和田が「こちらがお話した主催者であるkeiの沖田さんです。」と沖田を紹介した。
『初めまして、株式会社keiの沖田と申します。このたびは本当に有難うございます。かなり広いショウルームですね。』と改めて見廻す沖田に、
「初めまして、アイラインの横川です。」と小柄だが筋肉質とわかるぴっちりとしたTシャツに七分丈のパンツにデッキシューズ姿の横川。
「広いのは良いんですが、展示会以外はほとんど使ってないのでもったいなくて。前からホールで貸し出そうかって言ってたんです。だからうちも助かります。」と横川の名刺には取締役企画部長と書いてあった。それを見て納得した沖田だった。
『でも本当に有難うございます。まさかこんな広くてかっこいい会場が借りられるなんて、夢のようです。』と沖田。
「そんな大げさな。でもうちも参加させて下さいね、それが条件ですから。」と念を押す横川。
『もちろんです。』と沖田。
「それと今回の電話があってから、うちに出入りしているアクセサリーデザイナーに話したら、彼女もぜひ参加したいと言っていますがいいですか?」と横川。
『それは有難い。やはり雑貨の方がいた方がお客様も喜ばれますから大歓迎です。』と沖田。
日程と会場とメンバーが揃った幸運に身震いする沖田。詳細の打ち合わせがしばらく続いた。ところが…

■喜びもつかの間、打ち合わせしているときに一つの問題が浮かび上がってきた。