小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2011年 3月27 日(日)
第63話:「今どきのひとたち…」
■前回のあらすじ…偶然にも恵比寿でOEMの株式会社アイラインのショウルームが借りられることになったのだが、一つ問題があることがわかった。

「それはそうと、沖田さん。」と、アイラインの横川。
『はい、なんでしょう』と、笑顔の沖田。
「実はこのショウルームの唯一の欠点があるんです。」と意味深な眼差しの横川。
『ん?なんですかそれ?』と、沖田。
「実は、ここは元々地下倉庫を改装して作られたフロアーなんですよ。だから、お持ちの携帯がつながらないんです。」と横川。
『えっ?ちょっと待って。あっ、ほんとだ。圏外だ!』と携帯を開いて画面を見る沖田と和田。
「つまり、合同展としてお客様が来られるときに、担当者と直接コンタクトが取れないんです。我々が展示会をするときは、会社の電話から内線で呼び出されるからいいんですが…。」と、申し訳なさそうな横川。
『それはそうですよね。これでいろんなお客さんが、アイラインさんの電話にかけてもアイラインさん自体も困るでしょうし、それより今どき携帯がつながらないなんて誰も思わないでしょうから…これ意外な落とし穴かも…まずいよなあ。』と頭を抱ええる沖田に、
「この話しを受けた時にまずそのことが気になっていました。それで実は、沖田さんたちが来られてから聞いて決定しようかと思っていることがあるんですよ。」と、天井を見上げて何かを考えていた沖田に横川は続けた。
「先ほど言いましたが、元々うちはこのショウルームをホールとして貸し出そうと思っていたなのでうちの代表もOKを出しているんですが、会場専用で外線を1回線取ろうと思っているんです。そうすれば、案内状やメールにも載せられるでしょうし。もちろん受信専用ですが…」と和田と沖田を交互に見る横川。
「えっ、そんなことしてもらえるんですか?」と和田。
『そうなれば有難いんですが、いいんですか?』と念を押す沖田。
「私もそうですけど、営業の方がお客さんと携帯で話せないほうがつらいでしょう。但し電話をかけるには、1Fに上がってもらわないと無理なんですけど…」と横川。
『合同展をやるにも会場が無かった状況を考えると、この会場が見つかったのが奇跡です。参加企業の営業の方々に説明すれば何とか協力してもらえると思うんです。ぜひアイラインさんの方がそれでよろしければお願いしたいです。』と心を決めた沖田は、和田にも目で同意を求めた。
「そうですよ、逆に接客中に携帯がつながらないほうが商売に専念できるから良いかもしれない。」といつも前向きな和田。
「ああよかったあ、これでこちらも決定できます。早速回線を取る手配をします。番号はまた追って連絡しますから、DMには間に合うと思いますから。」と安堵の横川。
「これで日程・会場・メンバーが決まったし、あとは何をやるんですか沖田さん。」と和田。
『そうですね、一度参加メンバーの担当者で会いませんか。そこでまた細かいことをいろいろ話しましょう。とにかく楽しくて楽しくてたまらない合同展にしましょうよ。』と吹っ切れた沖田の顔も明るい。
「そうですね、その日程調整は沖田さんにお任せします。私はいつでもOKですから…」とこちらも笑顔の横川。
『では、また追って連絡します。』と沖田。

■ようやく動き出した合同展の第1歩。実は、大きなうねりの第1歩だったが、沖田たちはもちろん知る由もない。