小説:(隔週連載)

「がんばれ!沖田君」

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主人公:沖田裕貴(32歳)、妻(30歳)、
長女(3歳)、長男(0歳)の4人家族。

※彼が体験する業界の不思議を、
中堅営業マンの目線でお話します。
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2011年 5月29日(日)
第67話:「急がなければ…」
■前回のあらすじ…河本社長の突然の出展表明に戸惑う沖田は、では自分たちは辞退すると答えた。それを受けて河本社長から出た言葉は…

「わかった。ではこうしよう。」とソファに深く腰掛けていた河本社長が、前に寄ってきた。
沖田はまっすぐ社長を見つめたままだった。
「今回は沖田に任す。当初の予定通り愛?T?愛(aitai)だけで進めてくれ。ただし、太田圭子さんを途中で紹介してくれるか。そしてアランの太田社長が合同展に来られるのかどうかも聞いてくれ。できればそのタイミングで会いたい。滅多に会える人物ではないが、必ず来ると思うから。こういう場面だとフランクに物も言えるだろうし。いいかい?それが私からのお願いだ。」と見つめる社長。
『社命ですね。』と負けない沖田。
「お・願・い、だ。」と河本社長。
『分かりました。大丈夫です。私も、社長や部長を参加の皆さんに紹介するつもりだったし、最初から堅苦しい合同展にするつもりもなかったのですから…』と笑顔に戻った沖田。
「じゃあ、そういうことでどんどん進めてくれ。部長もそれでいいな。」と沢田部長を見つめた。
「はいOKです。私もできる限り期間中は会場に居ようかと思いましたから…」と言う部長に向かって、
「部長、やめてくださいよ。部長がずっと会場に居たら、堅苦しくなりますよ。どうみてもお役人みたいだし…」と突っ込む沖田に、
「そこまで言うか!」と笑う部長とうなずく社長。
それから社長室を出た沖田が、部長に言った。
『社長はどうしてもアランと組みたいみたいですね。』
「本体ブランドの存亡がかかっているようだな。」と部長。
『部長も初めて聞いたんですか、このこと…』と沖田。
「初めてだ、私も驚いた。」
『でも、こうなったらやるしかないですね。太田さんがキーパーソンなのは間違いないのだから。さあ、忙しくなるぞ〜。時間もないし、もう一度決めた役割分担に沿って確認していかなくちゃ。』と張り切る沖田に、
「おい、ところで合同展にはどれぐらいの客が来る見込みなんだ?」と顔を寄せる部長。
『あれ?目標言ってませんでしたっけ?』と沖田。
「聞いてないぞ。うちは30社呼ぶと藤原君から聞いているが、合同展全体でどれぐらい来場が見込めるのかは聞いてないぞ。」と部長。
『でしたよね。全体では150社の来社目標を立てています。まだ詰めますが、取りあえずは、1社30社ずつを努力目標にしました。』と沖田。
「個人の太田さんも客を呼べるのか?」と不安げな沢田部長。
『そこが問題ですが、軒数は少ないかもしれませんが、結構チェーン店やセレクトバイヤーが取引先にいるそうなので、その横並びの方々を呼ぶと言ってましたよ。それと百貨店も…』と言う沖田に、
「なるほど、百貨店も数のうちか…」と納得する部長。
『それを言うなら、OEMのアイラインさんや、バッグの大和田さんもうちと違う販路のお客さんを取りあえず最初だから全部呼ぶと言ってましたよ。』と沖田。
「面白そうだな」と笑顔の部長に、
『面白いんじゃなくて、楽しいんです!』と胸を張る沖田の携帯が鳴った。妻からだった。
『…ああ、今日は早く帰れるから…うん、うん、じゃあ』と声のトーンが落ちた。

■風雲急を告げるような電話が気になった部長の「どうかしたか?」の問いに『あ、いや別に何でも』と答えた沖田。動き始めたのは、会社か、合同展か、それとも沖田か。